バス停の女/禍話リライト

怖い話・怪談

九州のO県で、単線で一時間に一本のバスとかがあるんですよ。
バス停に一時間くらい待たなきゃいけないようなやつ。
田舎だし、変質者が出るみたいな事も起きないから結構おおらかな所でね。そういう所が大分には残ってるんです。
そこで聞いたことがあるんですけど…。

時間帯の都合とかで、バスの運転手さんが変な所で止まって、休憩してたりするんです。
普通は止まってるのってバスが契約してる駐車場だったりするじゃないですか。
結構、道端とかで休憩して、いい頃合いになったらまた出発すると。田舎だと結構あるんですよ。
で「そういうローカルルールってあるんだなー」って話をしてたら
「あ、ローカルルールと言えばね」って教えてくれた。

Oなんとかバスのとあるエリアでは、七時過ぎたら、とあるバス停では止まらないらしい。
止まれよって話じゃないですか。

田舎だから、どちらかって言うとそのOなんとかバスは、運転手さんに言ったらエリア内で止めてくれるってサービスがあるぐらいなの。
今現在はわからないですけど。エリア内だったら「ここで」って言ったら降ろしてくれる。料金は決まっててみたいな。
そういうサービスがあるくらいなのに、とあるバス停だけは止まらないって言うんです。意味わからないじゃないですか。

で、聞いたら、そのエリアの住人もバス停あるんだけどそこ使わずに、わざわざ一つ向こうとか、別のバス停まで移動してるんだって。
田舎のバス停って移動すごい時間掛かるの。下手したら徒歩三十分とかね。坂もあるし。
なのにみんな、使わないって言うの。
「なんで?」って聞いたら、話してくれた。

そこ、掘っ立て小屋みたいなのがあってバス停があるんですけど、辺りが全部畑。
だから夜の七時って暗いんです。


そこに出るんですよ。

季節関係なく、夜七時になると全身白い服でコーディネートした、多分女性。
何故多分かと言うと、ひらひらのスカート、お姫様チックなスカートで日傘さしてるんです。七時からずーっと。
夜ですよ。夜から朝までずーっと、差してるんですよ。

じゃあそこで何かあったのか?って思いますよね。無いんですって。
最初の時、それは何の前触れもなく起きたんだと。
普通そういう話って何かあってね、不幸な事故があった後にとかでしょ。
例えば、行き倒れがあったとか、近くに変死者が出た、車に轢かれたとか、そういうのじゃないんですって。
ある日いきなり、夜七時過ぎに居たそうなんです。
嫌じゃないですか?そんなの。

で、それに最初気がついたのは、ジョギングしてる人だった。そこがジョギングコースになってたから。
ジョギングしてる人が見かけて「何だ?気持ち悪い」ってなったんですよ。日傘がおかしいからね。
そのうち、他の人達もそいつを見かけるようになってね。
絶対怪しい人じゃないですか。そんなの。
バスも何度かは止まってたんです。一応、人がいるから。
でも、乗りもしないし何のアクションもしないんです、その人。
人というか何というか、傘差してる女かどうかもわからないんです。傘上げないから。

で、周りもね、前を通ると気持ち悪いわけ。ジョギングとかマラソンとかしてる人からすると。気持ち悪いじゃないですか、そんなバス停。
誰も行く勇気なかったんです。
ただ、町内会長みたいな人っているじゃないですか。会長じゃないんだけど、町内会長みたいな事をしてるような、世話を焼いてる人。
その人が、ジョギングなんかしてて「ちょっと俺行ってくるわ」って言って近づいていった。

前を通る人の中で、初めて日傘の人に一番接近したんです。もうゼロ距離と言うか、傘越しに「もしもし?」って声掛けるくらい。
「勇気あるなーあの人」ってみんな遠くから見てたんです。
そしたら「うわぁ!」って、バーって逃げてきて。
逃げてくるって言うか、ちょっと挙動不審な感じでこっちに、足早に待機してる人たちの所に戻ってきて。
「うわー…ちょっとヤバいねー」って。四、五十のおっさんがですよ。

「ヤバいねー」
「なにがヤバいの?」
「いや、あれさ。近づいたらわかったんだけど、傘が微妙に振動してて、ずっと『クックックックック…』って笑ってんですよ」
「笑っちゃ駄目でしょ
「あ、じゃあ狂人だね」って話になって。「近づかないようにしようね」ってなった。

で、次の日ですよ。
町内会長の真似事してるおっさんの奥さんから「旦那が帰ってこない」と連絡があった。

「え?おかしいな?」と思って、みんなであちこち捜したけどいないんです。
結構、飲み屋とか行っちゃう人だからって行ってみてもいない。
携帯鳴らしても出ない。

(おかしいな)

これね。辺りが暗いから、ひき逃げとかもしあったら見つからない事がある。早く見つけないと命も危ない。
あるいは酔っ払って寝てるとかもあるから「これ危ねえな」って。
青年団じゃないけど、総出で捜して。
…で一人が「いましたよ」って見つけたんです。
すごいテンション低いんですって。
「どこに?」って聞いたら…。

そうなんですよ。バス停にいたんです。しかも…。
日傘に入ってるんですって、二人で。

でも、着てるものが明らかに、履いてるサンダルとかからして、あのおっさんだってわかるんですけど。
「ちょ、近づけませんよ!」って言うし、
青年団のリーダーが「いや、そんなこと言っても、お前…」って恐る恐る近づいたら、二人で…
『クックックックック…』って笑ってるんですって、ずっと。

「あ、あかん…」ってなって。
「これは人間が介入しちゃ駄目だ」ってなって、もう触れないようにしちゃったんです。


そしたら深夜に戻ってきて、布団入って寝てて、朝起きたら何にも覚えてないんですって。
なので、『触れないようにしよう』って事になった。バス停は七時まで普通に使えるんですけど。
七時過ぎるとそこは、白い服を着て日傘差してる女かどうかわからないモノに占拠されちゃってるんですよ。

禍話/バス停の女

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