ある女の子に聞いた話なんですけど、その子の世代は『こっくりさん』ブームなんかとうに終わった後の世代なんですよ。
高校に入った時に生徒手帳が配られるんですけど、全校集会が長い時があって暇な時に中を見てたんですって。
そしたら最後ら辺に…
「こっくりさん禁止」って書いてあった。
なんか古くさいなって思ったんだけど、
校則を最初に作った時から１回も変えてないんだろうなって気軽に思ったんですって。
でもその後で何度かスカートの丈とかの校則が、実はちゃんと変わってるってことを知って、
じゃあ何でこっくりさんの所だけ残ってるんだろう。
もういらない無駄な一文なのに削除しないのかな。おかしいなって思った。
１回先生に聞いてみたんですって。
そしたら先生も「そうだよねー」って。
「昔何かあったんですか？集団ヒステリーとか」って聞いたけど
「特に聞いたことは無いんだけどね」って言ってた。
で、結構年配の先生にも聞いてみたんですって。興味があったから。
「何でこんなのずっと残してるんですか？」って。
年配の先生は「何か確か…人死が出たとかじゃないけど、何かトラブルがあって、
それだけは残そうってPTAの喧しい方が言って残してるって聞いたことはあるよ」
なんて話だったんですって。
結局理由はわからなかった。長老みたいな先生でもわからなかったんですよ。
そんなある日。夏だったのかな。
宿題忘れちゃったんですよ、その子。学校に。
プリント１枚くらいなんで、朝ちょっと早く学校に行ってちょっとやれば、正直15分から20分くらいで終わるような宿題なんです。
でもその子ねー、ちょっと真面目な子なんですよ。
１枚だけど、やっとかないと寝られないというかね。
だからもう学校行こうって思って。夕方から夜になるくらいに昇降口に着いたんですけど、
そこで、その子また真面目なんですね。
もう真っ暗な状態で、明かりつければ良いんですけど、
自分がプリント忘れて、翌朝来れば良いものを自分が気になるからって理由で来てるわけだから、
そんなことでいちいち明かりをつけるのは申し訳ないなーっと。
勝手知ったる校舎なんでまだ夜じゃないし。
別にわかるからと思って、電気つけずに行ったんですよ。
3階が自分の教室らしいんですけど。
階段もね、暗いから本当はつけたほうが良いんですけど。段差とか危ないから。そこは慎重に上がっていって。
階段行って、踊り場行って、階段行ってみたいな。
3階に着いて、そこの廊下も明かりつけずに行って、教室も電気つけずに行って。
まぁ、教室入ったら自分の席ぐらい分かるじゃないですか。
で、プリント見つけて、あったあったって安心した瞬間にあれ？と思ったんだけど。
学校来た時より暗くなったっていうんですよ。まぁ、夜って早いですからね。
「あ、夜の帳が降りてる！」みたいな感じになって。
（暗くなってきたな。ちょっと急いで帰ろー）なんて思って。
で、戻ろうって踵返して戻っていって。
さぁ、階段降りようって思ったら「え！」ってなった。
全く音とかしなかったらしいんですけど。足音とか。
階段のね、踊り場にね、4人ね…
人が座ってるっていうんですよ。
（うわっ！）て思って。
思わず後ろに戻っちゃったりして。
(え、え、誰かいる…)
何だなんだって、おずおずとこう覗いてみると…
どうやら女の子が4人ね、踊り場に座ってね、何かを取り囲んで座ってるって言うんですよ。
で、何かぶつぶつ、ぶつぶつ言ってるんです。
全然知らない、声の感じも知らない子4人でね。
何言ってるんだろう？って思って、よーく耳を澄ましてみると、
どうやら4人でね、声を揃えてね…
こっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさん…
って言ってるんですって。
ずーっと休憩ない感じで、こっくりさんこっくりさんって言ってるんですって。
こっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさん…
（ええ…！）って思ったんですって。
彼女『こっくりさん』したことないですけど、知ってるわけだ。
普通は例えばこっくりさん呼ぶ時は、
「こっくりさんこっくりさん、いらっしゃいましたら『はい』の所に来てください」とかやるじゃないですか。
『こっくりさん』に対して何かしら問いかけるじゃないですか。
で、来てたら来てたでね「『こっくりさん』誰々くんが好きな子は誰ですか？」とか。
質疑応答ですから、『こっくりさん』って言うのは。
なのにね、ずーっと4人で声合わせて
こっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさん…
って言ってるんですって。
（うわ！なにそれ！怖い！普通じゃない！）ってなったんです。
そもそも、足音とか全く聞こえなかったし。何してるんだろうって。
正式な『こっくりさん』じゃないし。
当然ですけど反対側にも階段があるんで、そっちから降りようと振り向いたらもう完全に夜の帳が下りてて真っ暗なんですよ。
でね、思っちゃったんですよ。もう一つの方の階段に行っても、
あの4人が「こっくりさんこっくりさん」って言ってたらどうしようって。
もう、そう1度考えたらその場から1歩も動けなくなっちゃったらしいんですよ。
彼女からは見えないけど、相変わらず4人は、どうやって息継ぎしてるのかわからないけど、
ずーっと、恐らく50音を書いた紙を取り囲んで
こっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさん…
って言ってる。
彼女は額にすごい脂汗を浮かべながら
（何なの？いつ終わんのこれ？っていうか『こっくりさん』なんだから質問しなきゃ駄目じゃない！）
って思ったらいきなり…
こっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさんこっくりさん こっくりさんこっくりさんこっくりさん こっくりさんこっくりさんこっくりさん こっくりさんこっくりさんこっくりさん こっくりさんこっくりさんこっくりさん こっくりさんこっくりさんこっくりさん こっくりさんこっくりさんこっくりさん こっくりさんこっくりさんこっくりさん こっくりさんこっくりさんこっくりさん こっくりさんこっくりさんこっくりさん こっくりさんこっくりさんこっくりさん こっくりさんこっくりさんこっくりさん こっくりさんこっくりさんこっくりさん こっくりさんこっくりさんこっくりさん こっくりさんこっくりさんこっくりさん
こっくりさんは忘れ物を取りに来たんですか？
えっ！って思って。
思わずその今まで視線をずらしてたんですけど、4人の方見たら…
４人が自分の方見てるって言うんですよ。
「うわっ！」って。
その瞬間、記憶失っちゃって。
人間って凄いなーって思うんですよね。防衛本能っていうのか。
次の瞬間気づいたら、「大丈夫ですか？」って店員さんから声掛けられて。
（えっ？）ってよく見たら、
学校で履いてるスリッパのまま、学校近くのコンビニのアイスコーナーの前に立ってたっていうんですよ。
で、変な話なんですけど、そこは本能なのかな。
自分の大好きなミントかなんかのアイスの前に立っててずーっと見てたから
店員さんが「万引でもするのかな？」それとも「追い詰められた子なのかな？」って声かけたって言うんです。
で、彼女が言うわけですよ。
「何があったか知らないけどね、あんなのが出るんだったらそりゃあ『こっくりさん』禁止になりますよ」って。
禍話より/こっくりさん禁止の学校
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