4・5年前の話なんですけど、そいつアパートに住んでるんですね。
いつも1階の角部屋に住んでる奴が、高校生か、大学一年生かわからないけど
夜中、ずっと車のクラクション鳴らしながら、ギャンギャン曲鳴らしてうるさかったんですよ。
でもあんまり言っても、向こう柄悪そうだし、
こっちは社会人だし怖いな、みたいな事があったんですって。
で、ある時も、また金曜の夜だったのかな。
明日も仕事だと。早く寝たいなって思ったら外からギャンギャンギャンギャン、ズンジャカズンジャカ音を立てて。
「うるっせーな。明日俺、仕事だってのに呑気だなーもう。こういう若いもんは」とか思って。
注意しに行ったら「うるせー!」って壁とか蹴られたらやだなー」と思って行けないわけ。そこはね。
行けなくて、あー!!とか思ったら、
安いから響くんだよね。アパートだから。音とかが。
で、どうも会話聞いてると、今から心霊スポット行くみたいな事言ってる。
「ここマジでヤベーんだぜ」「廃病院はマジでヤベーよ」みたいな。
どこの確証があって言ってんだって思ってて。
「廃病院はさー」
話聞いてると、只の廃病院じゃないぞ、と。
最近って病院がやめる時、器具とか危ないから業者とかが回収するじゃないですか。
そういう事をしなかったような、夜逃げ同然に逃げたような病院とか言ってたんです。
だから、カルテとか注射器とか…
「ホルマリン漬けの胎児とかあるらしいぜ!」
それは無いだろ!とか思いながら。
どんな病院だよ!昭和のホラーか!とか思いながら。
とにかく…
「えー!こわいー!」
「俺がいるから大丈夫だって!」とか言ってる。
住人イキってるな今日は、とか思いながら。
で、バーって行っちゃったんですって。
行った!良かったー!とか思って。
で、肝試しだから、今から行って2時3時とか。
帰ってくる頃には自分は寝てるの。寝ちゃったら目が覚めないから、その人は。
で、「良し!」って寝たんですって。
で、朝起きて、朝早めだったのかな。6時くらいに起きなきゃいけない。
時間になって起きて、良かった寝れたって思って。顔洗って外出て。
そしたら車があって、帰ってきたんだな1階の奴らも馬鹿め!とか思いながら。
そこは駅に行くまで、下り坂らしいんですよ。アパートから。
そこを歩いて行ったら、
『ガチャ』
って音がして。ん?って振り向いたら…、
角部屋のドアが開く音だったの。普段聞いてる音だからわかるわけですよ。
あれ?って思って。
朝も早よから起きてきたな、と思ってたら違って。
出てきたんじゃなくって、中に入っていく音だったんですって。
ん?と思ったら、一瞬だけしか見えなかったんですけど、
女性だったって言うんです。
(何だ?朝から。彼女か?起こしに来たのかな?いいなー)って思って。
で、まあ、普通に通勤して行ったんですけど。
通勤しながら、何で朝から女の人が?って思った。
女の人っていうか、白い服を着た女の人だって言うんですよ。
なんだろう?って思ってたけど、その日は普通に仕事に行った。
でもその夜、仕事のトラブルで立て込んで、夜の11時くらいに帰る羽目になっちゃったんですって。
もう、クタクタになって帰ってきて、外階段上がろうとしたらまた…
『ガチャ』
って、1階の角部屋から。
バタンって閉まった。誰か出てきたんじゃなくてまた誰か入っていった感じ。
あれ?また同じ奴だったよね?って。
なんとなく、朝見た奴同じ…白い服着た女の人。
何だ?と思ったけど、まあ別に気にせず(まあいっか)と思った。
で、変な話なんですけど、人間って見てないようで見てるって事があるらしくて
例えば、視界の隅に捉えてた程度だったとしても、ちゃんと見えてたり。みたいな。
それを急に思い出すって事あるじゃないですか。
家帰ってジャージに着替えてビール片手に落ち着こうとした瞬間、はっと思い出したんですって。
「あ、ナース服やった。昔の看護婦さんの」
あれ?怖いなと思って。
さっきのあれ、間違いなくナース服だったなと。
ナース服の女が夜入っていったら駄目だろう。コスプレじゃあるまいし。
えーなんだろう?って考えたら、
昨日、病院に行くって言ったよねって思い当たった。
ちょっと怖くなったんですよね。
正直、キャッキャウフフみたいな声がしても良いはずなのに無音なの。壁薄いから。
しかも、時間的にうるさい車の友達が来るはずなのに来ないんですよ。毎日来てるのに。
ますます怖くなった。
怖いから、普段ならビール1本で酔っ払う人なんですけど、2、3本開けちゃうみたいな。
で、その日は早めに寝ることにした。
そしたら夜中に、コンコンコンコン、コンコンコンコンってドアをノックする音が聞こえてきた。
何?インターホン使えばいいのに。
起きたんだけど、酔っ払ってるから億劫になってるんだよね。
コンコンコンコン、コンコンコンコン「先生!先生起きてますか!」って聞こえる。
先生じゃないの、自分は。役職的にもね。なのに。
「先生!先生起きてますか!」コンコンコンコン。って言うんですって。
え?何?と思ったけど仕様がないから、部屋のドアを開けてちょっと歩いていって、玄関を開けようとして。
コンコンコンコン「先生!先生!」
寝ぼけた頭がしっかりしてきて(俺、先生じゃねえぞ。何だこいつ)と思って。
覗き穴があるから見てみたんですって。
昭和の看護婦みたいな女性がノックしてるの。
「先生!先生!」って。
コンコンコンコン「先生!先生!患者の容態が急変したんですけど。先生!先生!いらっしゃいますか!先生!先生!」
(ここは仮眠室じゃないよ)と思って。怖いじゃないですか。
しかもね、看護婦をよーく見るとね、口では「容態が急変しました!」
とか言ってるんですけど、口元若干笑ってるんですって。
えー…と思って。
「先生!先生!先生!!」
すごい嬉しそうに
「患者の!容態が!急変したんですけど!」
それ見て、(うわ!やべえ!)って思って。頭真っ白になって部屋まで後退りして。怖いじゃないですか。
でも、インターホン押して来ないわけですよ。相手は。
でも怖いから。玄関出たら即自分じゃないですか。
だからもう一回、部屋のドアを閉めたんですよ。閉めた瞬間にそのドアが…
コンコンコンコン!って叩かれた。
「先生!先生!」
「先生!先生!患者の容態が急変してるんですけど!」って言って。ものすっごい笑ってるんですって。
(怖い!)って思ったけど、「何だテメー!」って思い切って開けたんですって。
誰もいないの。
玄関の音も止まってて。
怖いからヤケクソになって外に飛び出ても誰もいないの。
怖い!ってなって、どうしたかっていうと、その足で玄関の財布持ってコンビニに行って、絶対飲まない度数のお酒買って、
凄い飲んだんですって。
もう、何が起こっても、ノックが聞こえても俺は起きない!みたいなね。
そのお陰でベロベロになって。道すがら飲んでたんですけど。
で、何とか、ちょっとぐらいノックされたかもしれないけど、凌いだんですって。
で、翌日午後の2時3時に起きて。頭痛えなー…何この休日って思いながら。
(昨日のあれは何だったんだろうな?)なんて思って。
1階の事気になるじゃないですか。
直接ピーンポーンって鳴らして行くにも言いづらいし、悩んでいるうちに1日が終わった。
で、翌日の月曜日。
仕事が忙しくて、1階の部屋を気にかけてたけど確認に行けないなーと思ってた。
けど、金曜日あたりに、家族っぽい人達が来て、1階の角部屋から荷物を出して、ドンドントラックに積んでいってるんですよ。
吃驚したんですけど、家族のリアクションとか様子を見てると、どうやら亡くなった感じではない。
ただ何か「あの馬鹿、何であんな…」みたいな顔で作業やってるの。
何をしたかわからないの。聞くわけにもいかなかったから、あんまり。聞ける雰囲気じゃなかったから。
そのまま引っ越しちゃった。
で、そのまま1階の角部屋空いちゃった。
それって結局、病院で何かあったって事なんでしょうね。
でも、それを確かめたくは無いって言ってましたね。
どこに行ったかも知りたくないし。それだけの怖い思いをしたんだから。
だって2階に住んでただけでもこんな怖い思いをしたんだから、行った奴はどうなったんだと思うと、確認したくないでしょ。
あ、そうそう。これあんまり話したくないんだけど。
それで、この話4、5年前に聞いてちょっと調べてみたんですよ。
そいつ以外の周りの奴に聞いてみたら、
その廃墟って、病院じゃないんですって。
何かそれっぽく見える保養施設だったんで、周りが病院じゃないかって?って噂になって、
段々とその保養施設だったっていうのが忘れ去られていくうちに病院だって事になってた施設らしいんですよ、どうも。
じゃあ、そこから来た看護婦って、看護婦のマネしてる奴ですよね。
そんな話がありました。
禍話/訪問する女
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【動画もあるので良かったら見てね~】
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