ふえるこども/禍話リライト

怖い話・怪談

これはね、お盆とかに、お婆ちゃんお爺ちゃん家に行かない方が良いと思うなー。
遠縁の家にあんまり行かない方が良いなーって話なんだけど。

今でこそいい大人なんだけど、子供の頃のいや~な思い出があるんですって。
結構記憶が朧気なんですけど、毎年夏に、父方の親戚の家に泊まるような事があったんですね。
もう、どういう関係か聞きたくないくらい嫌な話らしいんです。

で、家がだだっ広いから部屋もだだっ広いんですよ。
自分一人に、めちゃくちゃ広い和室なんですって。
で、寝付けないじゃないですか、広すぎて。
だから、そういった意味で翌朝寝不足になるのが嫌だったんです。
でも、田舎だからちゃんと朝ごはんが出てきたり、川で遊べたりして、そこは満足出来たんだけど、夜が嫌で仕方ないんですって。
蚊帳か何か吊られるんですって。蚊帳とか田舎の家でしか入ってないから、逆にちょっと怖いんです。


最初、説明無く吊られて「なんだこりゃ!」みたいな。
蚊帳越しの外の風景も何かちょっと嫌なんですって。で、だだっ広いでしょ?
(もう、やだな~)なんて思ってたんですって。

そしたら、いつからそれが始まったのかわからないんですけど。
まあ田舎ですから、障子があって外廊下があって、庭が広い状況なんですね。
障子に、誰かの影が映るっていうんです。
彼は当時、幼稚園くらいだったらしいんですが、それは、自分と同じくらいの女の子だった。その影が映ってる。

写真AC

最初の頃は、影が映ってるだけだったんです。
女の子が立って、多分、自分の様子を伺ってる。
(なんだろうな。気持ち悪いな。一言もしゃべらないし。怖いなー)
で、その夏が終わる。

嫌だよね。泊まってる間ずっとさ、知らない女の子がずっと障子越しに様子を伺ってるんですよ

でね、いつからか忘れたけど、横に、もう一人いると。
今度は多分髪型とか着てるものの感じからして男の子だと。障子越しに見てる。
それでね、二人で話してるんです。ぼそぼそと。
その言い方がね、子供の言い方じゃないんですって。
女の子が、すごい低い声で「二人じゃ駄目だなー」って言ってるんですって。
どうやら、「自分達二人では、この障子を開けて中に入る力が無いみたいな事を話してるんですって。難しい言葉で。
何か、「我ら」だか「身共」だかみたいな言葉を使うんですって。

兎に角、難しい言葉で「自分達の力では無理だ。応援を呼んでこよう」みたいな事を言って一人いなくなって、三人に増えた。
それが、ドンドン増えてきたんですって。
でも、子供って不思議なもんで、日中は忘れてるんです。楽しい事とか一杯あって。
夜になって「あ、そう言えば…」って見ると、五、六人いるんですって、子供が。

その頃には自分は小学校四年くらいになってて、その歳ならもうわかるじゃないですか。これはもう、尋常ならざる事態だって。
じゃあ「行きたくない」って言えばいいんですけど、何故か日中になるとその事を忘れてるんです。完全に。
夜、思い出して「あ!いかんいかん!そうじゃないか!」って見たら、障子越しにめちゃめちゃ子供居るんですって。十人くらい。
なのに、その最初から居る女の子らしい奴が「まだまだこの人数では足りぬ…」みたいな事を言うんですって。
怖いじゃないですか。

(うわ!怖い!)とか思ってたら、丁度人数がすごくなってきた頃、なんか親戚の関係が疎遠になったと言うか、行かなくて済むようになったんです。
良かった良かったってなってて、それから高校生くらいになった時、夏場にふと思い出して親に
「そういえば昔、何か親戚の家に行ってたよね」って言ったんですって。
「あー、あんたねー、あそこ行くと寝付き良くてねー」
(全然寝付き良くねーよ!めちゃめちゃ子供いたわ!)とか思いながら「あー、そうねー」って答えてたんだけど。
「あそこ急に行かなくなったよね」
「うん。ちょっとあそこの家の子が病気になっちゃってさ。あんたが寝てた部屋で寝泊まりするようにしてたんですって」

親の話では、その家の子供が、誰も使わない客間で寝る事にしたんですって。
寝始めて一ヶ月経たないうちに、身体の神経の重大な病気が見つかって。まぁ、その子死んでないんですけど、ずっと、未だ入退院してて。
大人になって結構いい歳なんですけど、それでもまだ治って無くて。
そういう病気が急に見つかって。医者も「何でこんな病気が急に出るんだろう?」って言うような状態だったらしくて。
「まぁだから、こんな大変な時に…」って話してくれたんだけど
(うわー…あのガキ、入ってきちゃったんだ…)と思って。

それが「いやーな思い出だ」って言うんですよ。

皆さんも、親戚の家には行かないほうがいいな。

禍話/ふえるこども

————————————————————————–

【この話の動画】

コメント